犯してはいけない吉原禁断のルール、掟を破って惹かれ合う男と女には・・・嫌われる客は今も昔も同じ
はじめての吉原ガイドブック
■情人は遊女にとっての心の支え
遊女が仕事を抜きに、本当に惚れた男を情人(いろ)と言った。
日々、不特定多数の男と性行為をしなければならないのが遊女の境遇である。それだけに、真の恋愛にあこがれていた。そういう遊女の心の隙間に入り込んだのが情人と言えようか。遊女は情人が金詰りになると、自分の借金にして、無料で情人を登楼させた。
遊女にとって、情人の存在は心の支えだった。いっぽうの客の男からすれば、吉原の遊女の情人になるのは、最大の見栄だった。
妓楼は遊女が仕事にはげんでいる限り、情人の存在を見て見ぬふりをしていた。だが、遊女が情人に夢中になり、ほかの客をおろそかにするようになると、楼主と遣手が動き出し、遊女と情男を別れさせることもした。
こうした悲劇は、戯作や浄瑠璃にも仕立てられている。

情人との逢瀬。『艶本葉男婦舞喜』喜多川歌麿画、享和2年(1802)刊、国際日本文化研究センター蔵
【図4】は、遊女が本来の客に隠れて、情人と情交しているところである。実際は真っ暗闇であろう。情人と遊女にとって、こうした危ない橋を渡るような逢瀬は、一種の恋愛遊戯でもあった。